epiサポ てんかんといっしょに暮らす

てんかんと暮らす

日常生活をサポートするポイントを
成長に合わせたライフステージごとに、
Q&A で分かりやすくご紹介していきます。

岩﨑 俊之 先生
監修
北里大学病院 小児科 准教授
岩﨑 俊之 先生

幼児期・保育園・幼稚園小さいうちは何かと不安なことも多いもの。
これからを考えていくステージです。

  • この時期に発症するてんかんには、どのようなものがありますか?

    乳幼児期に発症するてんかんには、良性乳児ミオクロニーてんかん、ウエスト症候群、レノックス・ガストー症候群(LGS)などがあります。

  • 保育園・幼稚園の先生には病気について、どのように伝えたら良いでしょうか?

    担任の先生に、てんかんのことを正しく理解してもらうことが、第一歩となります。

    てんかんは、めずらしい病気ではありませんが、一般の方にはまだ正しい知識が普及していなかったり、「怖い病気」などと誤解されていることも少なくありません。

    従って、病気の特徴と発作時の対応について以下の点を踏まえてお伝えください。

病気について

  • ● 病気について

    「てんかん」という病名には、その原因や症状、予後や合併症など様々なタイプに基づく診断が含まれます。
    一般的な知識は、日本てんかん協会のパンフレットやホームページなどの正しくしっかりした情報が頼りになります。
    それらを先生に見ていただくことは、良い方法のひとつです。

    その上で、お子さんの、発症時期や日常生活で注意していること、どんな薬を内服しているかなどの情報を、担任の先生にお伝えして、コミュニケーションを図りましょう。

  • ● 発作について

    てんかん発作は、一人ひとり違いがあります。また一般的に発作というと、意識を失い、手足がガクガクする強直間代発作を連想される方も多いと思われます。

    少しの間だけボーッとする欠神(けっしん)発作や、一瞬ピクッとするミオクロニー発作などは、発作と気づかれにくい場合もあります。

    ほとんどの発作は数分~数十分でおさまります。
    お子さんのもつてんかん発作の様子と発作がおきた時の対応を、予め十分に話し合っておきましょう。

  • (参考リンク)
    公益社団法人日本てんかん協会 >
    てんかんと向き合うために >
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    知っていますか?てんかんという脳の病気 >

  • ワクチンなどの予防接種は受けても大丈夫でしょうか?

    現在では最後の発作から2~3か月程度経過している場合で、担当医師から予防接種が問題ないとの説明があれば、積極的に受けることを検討してください。

    また、発作が抑制されていない場合や、発熱による発作が誘発されやすい場合には、医師の判断が必要となります。

    さらには、ワクチン接種翌日はワクチンによる発熱をはじめとして副反応がみられる場合があるので、接種日を含めて、事前に医師とよく相談することが重要です。

小学生・小学校生活はじめての学校生活と友達とのおつきあい。
のびのびと成長するステージです。

  • 学校の先生や友達には何をどのように伝えたら良いでしょうか?

    幼稚園の時と同様に学校の先生に、正しく理解してもらうことが重要です。

    先生に対して

    てんかんには様々なタイプや状況がありますので、 正しくしっかりした情報を先生に伝えることが最も良い方法です。 その上で、お子さんの服薬や日頃の注意点などの情報を、 学校の先生にお話して、 先生方の理解を深めていただきましょう。

    てんかんは、発作の症状や対処方法が人により違います。 担当医師から学校の先生方へ発作時の対処方法や学校行事への 参加を伝えてもらうのも良い方法です。

    (参考リンク)
    てんかんと向き合うために >

  • 体育の授業で夏にプールがあります。参加させてよろしいでしょうか?

    可能な限り参加させることが望ましいです。

    育ち盛りのお子さんにとって、症状を引きおこしたり悪化させたり、 あるいは生命の危険に及ぶ行為以外は日常の生活に 制限を加えるべきではありません。

    水泳中は概ね適度な心理状態(緊張感)が保たれており、 てんかん発作が引きおこされる可能性は低いと考えられます。

    しかし絶対に安全とは言い切れませんので、 授業中に目を離さず見守ることができれば、プールの授業は可能でしょう。

    本人の状態、水泳への理解や運動能力を考えて、指導教員やプール監視員に正しい病気の情報と対処法を伝えておいてください。
    プールサイドに上がった後に、緊張がとけて発作がおこるかもしれません。注意が必要でしょう。
    また、飛び込みや潜水、海や川での水泳なども安全が確保できないかもしれません。担当医師の指導を仰ぎましょう。

  • 友達とテレビやゲームをしたがりますが、どうしたら良いでしょうか?

    発作が十分に抑制されていて、以下の条件を満たせば可能です。

    お子さんにとってテレビやゲームは大きな楽しみになっています。 ただ禁止するとストレスを高め、結果的に発作に悪影響を及ぼすかもしれません。

    長時間、連続して行うことは避けときどき休憩すること、 部屋を明るくしてテレビ画面からは適切な距離を保ち刺激を避けるなど、 正しく楽しめるよう日頃から指導しておきましょう。

    また就寝前など、睡眠や生活リズムに影響するタイミングでの テレビやゲームは、制限するようにしましょう。

  • 娘が初潮の年頃になります。どのように心構えしておけばよいでしょうか?

    一般に女性の生理と精神状態には密接な関係があり、健康な女性でも月経時に精神状態が不安定になることは、しばしばあります。
    てんかん患者さんにとっても、リスクの1つになり得ると言えます。

    初潮を機にてんかんの発作が始まったり、生理に関係したタイミングで 発作がおこるケースもあるようです。

    エストロゲン(女性ホルモン)が発作をおこしやすくするとの説もあります。

    お子さんには、生理は“どの女性にもおこること”を教えて、出来る限り不安を取り除いてあげましょう。
    できれば、初潮~月経の記録をつけておき、発作がおこってしまったら、 担当医師に相談しましょう。

中学生・中学校生活思春期のデリケートな毎日。
本人の希望も大切にしながら過ごしたいステージです。

  • 学校のクラブ活動に入っても大丈夫でしょうか?

    発作の状態にもよりますが、基本的には通常のクラブ活動は普通に行えます。
    あくまでも、本人の意思や能力/体力に応じた活動が基本となることは言うまでもありません。

    連日・長時間におよぶ過酷な活動、体力に負担が大きい運動は、疲れや発作を引きおこす可能性が高まりますので、十分に注意が必要となります。

    また、クラブ活動の疲れから、正しい食事や睡眠に影響が出て生活リズムが乱れるようなことは避けなくてはなりません。

  • 修学旅行を楽しみにしていますが、本当に行っても大丈夫でしょうか?

    発作が十分に抑制されて、本人が発作誘発の危険性を理解した上で投薬を自己管理出来れば、参加できると思われます。

    家庭を離れ同級生の子供同士で宿泊する貴重な機会であり、お子さんにとって重要行事の1つです。

    修学旅行は団体旅行の1つでもあり、心配も少ないと思われがちですが、旅先でてんかん発作をおこす場合は稀にあります。

    理由として、“連日内服する抗てんかん薬を飲み忘れる”、 “思い出作りに没頭したり興奮して普段より寝るのが遅くなる”などが考えられます。出発前のお子さんに、内服の重要性と禁止事項を繰り返し説明してあげてください。

    また旅先で発作がおこれば、現地の救急病院に搬送されることも考えられます。
    旅行など宿泊を伴う外出をする場合は、てんかんの診断、最近の発作状況、服薬しているお薬の情報を記入したメモを作成し、本人から引率の先生に予め伝えておくと、安心感が深まります。

高校生・高校生活そろそろ大人になるための準備段階。
将来を見据えて変化するステージです。

  • アルバイトをしたいと言っています。アルバイト先の選択についてアドバイスをお願いします。

    小児期に発症したてんかんは、適切な治療を受けることで、半数以上のお子さんの発作頻度を極めて少なく出来るか、 てんかん自体を治せる可能性があります。

    てんかんを抱えたまま成人に至るお子さんは、高校入学の頃から将来の職業を念頭に進路を選択していくことになります。

    ただし、次のような注意が必要です。

    夜勤のない仕事を選ぶ

    生活が不規則になると発作がおこりやすくなります。

    意識のなくなる発作がある場合には、
    運転や危険な場所や道具を使う仕事を避ける

    バイク運転や高所や船上、危険度の高い機械や道具を使った作業中などに 意識がなくなると、大きな事故に繋がる危険性があります。

    本人だけでなく家族や周囲の方が、担当医師を交えて よく話し合いをして進路について考えていくことが重要です。

    てんかんは成長に伴って自己管理の必要性が高くなります。 本人が自分の病気を正しく前向きに理解し、受診や服薬はもちろん、 規則正しい生活の管理などができるように促して行くことも、 社会に参加していく上で必要です。

  • バイクの免許をとりたいと言っています。とりに行かせて大丈夫でしょうか。

    てんかんがあっても、一定の条件*を満たせば普通自動車免許と自動二輪の運転免許を取得可能です。

    運転が業務の中心となる配達のアルバイトや夜間の必要性の低い使用などは避けるべきですが、通学や通勤、生活場面では乗れる場合がありますので、 担当医師とよく相談しましょう。

    また、通勤で使用する場合、アルバイト先の理解や情報交換なども考慮しましょう。

  • 毎晩遅くまで受験勉強しています。親としてサポートしてあげられることはありますか?

    規則正しい生活のリズムを崩さないようにすることが重要です。 人生にとっても大切な受験勉強ですが、日々の生活のリズムを崩す点では大きなリスクとなります。 睡眠不足は、発作やストレスを増やす要因となってしまいます。

    また、深夜に1人で過ごすことは、発作をおこす危険性と隣り合わせとなります。 深夜にとる夜食が毎日の食事のリズムを崩すことがあり、食事の前後にのんでいるお薬の効きにも影響することも考えられます。

進学/就職〜社会人進学や就職。社会の一員としての
スタートをきるためのポイントを紹介します。

  • 運転免許をとりたいと思っています。どうすればとれるでしょうか。

    てんかんがあっても、次のような一定の条件を満たせば運転免許取得のための診断書申請は可能です。

    • 1. 過去5年以上発作がない患者
    • 2. 過去2年以上発作がなく、今後も数年間は発作をおこす恐れがないと医師から判断された患者(数年後に臨時適正検査が必要)
    • 3. 1年間の経過観察で、意識障害や運動障害を伴わない発作しかおこしていないと医師から判断された患者
    • 4. 2年間の経過観察で、睡眠中の発作しかおこしていないと医師から判断された患者

    免許の取得については保護者の方とよく相談し担当医師に診断書を書いていただきましょう。運転免許について詳しくは最寄りの警察署や運転免許センターにお問い合わせください。

  • 就職先の選択について悩んでいます。アドバイスをお願いします。

    てんかんの患者さんが成人になり就職する時には、将来を視野に入れて職業を選択していくことが重要です。

    可能な限り、本人の希望や個性、能力に合わせて、柔軟に職業を選択していくことが望ましいと言えます。

    ただし、発作によって意識がなくなると直ちに大きな事故に繋がる危険性がある仕事、すなわち運転、高所や危険性の高い場所、危険性の高い機械や道具を使った作業などは避けるべきです。

    職業に関する免許や資格には、「障害者欠格条項」という規定があり、資格取得や更新などに制限がある場合がありますので、事前に関係する機関や担当医師に確認が必要となるでしょう。

    また、発作を防ぐには規則正しい生活が大切ですので、夜勤がない、残業が少ないなど、勤務時間帯にも考慮しましょう。
    就職相談は、ハローワーク、障害者職業センター、障害者就業支援センターで受け付けています。

    進路は本人だけでなく、家族や周囲の方、担当医師を交えて、よく相談しながら進めていきましょう。

    なお、勤務先が決まった場合、勤務先の理解や情報交換なども配慮しましょう。
    成人後に飲酒する場合は、過度な飲酒は禁物ですので、勤務先の理解も重要となります。

    公益社団法人日本てんかん協会 >

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  • 娘にボーイフレンドができました。親としてアドバイスしてあげられることはありますか?

    恋愛は、人生にとって大切な経験となりますが、同時に感情が不安定にもなります。まずはボーイフレンドが理解してもらえそうならば、病気のことを正しくお伝えすることが理想的です。

    2人だけで過ごす時間も増えますので、てんかんの患者さんには適していない無理な行動やリスクのある環境を避ける知識を共有してもらいましょう。 医師の指示を守って、節度あるおつきあいであれば、てんかん発作を十分に抑制できます。

    また、将来的に結婚・妊娠と夢が広がります。 しかし、自分の親戚を含めた周囲や社会の中には、偏見や病気を誤解した人がいる可能性があります。
    てんかんを持つ女性の多くが妊娠・出産を問題なく行えますが、 妊娠期間中の発作や抗てんかん薬の副作用などが悪影響をもたらすこともあります。結婚や妊娠など女性にとって大切な節目には、担当医師にも伝えておきましょう。

日々の生活についててんかんへの対応はふだんの生活の中にあります。
日常生活におけるポイントをご紹介します。

  • 日々の生活についてのポイントを教えてください。

    こどものてんかんの発作の原因は、発熱や感冒(かぜ)、睡眠不足、怠薬、身体的疲労精神的ストレスなどが主なものです。
    つまり家庭で気をつけて対応できることがとても多いといえます。
    ご家庭での注意点を一言で言うと「規則正しい生活、服薬と身体の健康を保つこと」です。

  • 睡眠をとるときの注意点はありますか?

    日々の生活の中で、睡眠はてんかん発作に大きく影響します。
    特に睡眠不足は多くの種類のてんかんで、発作を増やす要因となってしまいます。

    良質な睡眠をとり、1日の生活リズムを整えるためのポイントは、朝起きた時にたっぷりと明るい光を浴びること、 規則正しい食生活を心がけること、昼間は適度な活動をすること、そして夜になったら部屋の光を落とした環境で休むという、当たり前の規則正しい生活を続けることです。

  • 毎日の食事はどのようにとれば良いでしょうか?

    偏食を避けたバランスの良い食事を、安定した生活リズムに合った一定の時刻にとりましょう。

    刺激のある辛いものは避けたり、寝る前にコーヒーを飲むなど、 睡眠に悪い影響しそうなものは避けるなど、考慮しましょう。

    また、グレープフルーツは一部のお薬の効果に影響を及ぼすことがあり、 特に注意が必要です。必ず事前に、担当医師に確認しましょう。

    食事中の注意点として、けいれん発作により食卓の食器の上に頭を倒れ込ませることがあるので、 発作の抑制が不十分なお子さんはプラスチックの容器を使う、熱い物は温度や遠くに置くなどの配慮をすると良いでしょう。
    また、キッチンには火や包丁など危険なものが多いので、十分注意しましょう。

  • 入浴時に気をつける注意点はありますか?

    子供のてんかんにおいて、お風呂での溺水は生命にかかわる重大な事故となります。入浴中の発作は大人の患者さんでもたくさんの事故例があり、ふだんしっかりしているお子さんでもおこり得ると考えておきましょう。

    年齢が許せば、どなたか他の人と一緒に入浴するようにし、どうしても1人で入らなければならない場合は、時々声をかけたり異変にすぐに気づける人が近くにいるなどの、工夫をしてください。可能な限り、1人にならないようにして入浴させましょう。

    また、湯船のお湯の量を少なめにする、浴室のドアの鍵はかけない、湯船にお湯を入れずシャワーだけにする、なども考慮しましょう。

社会制度、公的サービスについて

てんかんには治療が継続できるように、経済的な負担や日常生活での負担が軽減し、患者さんやご家族を支える様々な制度やサービスがあります。
制度やサービス、自治体によって、窓口や手続きの方法は異なります。
詳しくは、かかりつけの病院や担当医師、各自治体の窓口、地域のソーシャルワーカーなどにご相談ください。

てんかん治療の医療費に関する制度

●自立支援医療(精神通院医療)

心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。

対象者
てんかんや精神疾患の診断で治療を受けている人
申請窓口
市町村の精神精神保健福祉担当課

●小児慢性特定疾病医療費助成制度

子どもの特定の慢性疾患では、治療期間が長く、医療費負担が高額となります。
児童の健全育成を目的として、疾患の治療方法の確立と普及、患者家庭の医療費の負担軽減につながるよう、
医療費の自己負担分を補助するものです。

対象者
ウエスト症候群、乳児重症ミオクロニー てんかんやレノックス・ガストー症候群などの法に定められた疾患の治療を受けている
18歳未満 (各疾患ごとに対象基準が定められています)
申請窓口
保健センターまたは保健所(地域によって異なりますので、詳しくは各行政機関へ確認してください)
小児慢性特定疾病情報センター >

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●難病医療費助成制度

すべての年齢の特定疾患と診断された人を対象とし、医療費の自己負担補助するものです。

対象者
すべての年齢の特定疾患と診断された人を対象とし、医療費の自己負担補助するものです。
申請窓口
保健センターまたは保健所(地域によって異なりますので、詳しくは各行政機関へ確認してください)
難病情報センター >

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